奈良市の汚部屋敷、嫁姑バトルを片付け虎の穴で攻略

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「片付いてるやん?!」

今回ご紹介するお宅の写真を見た方は、まずそう思われるはずです。リビングのクローゼットを開けると、そこに広がるのは惚れ惚れするほど整った収納。「これのどこが汚部屋なの?」と拍子抜けするレベルです。

でも、そのクローゼットのすぐ隣の部屋には、床がまったく見えないほど要・不用品が積み上がっている……。奈良の高級住宅地として知られるとある旧家で、私たちが出会ったのは、そんな「几帳面な島」と「カオスな海」が同居する、なんとも不思議な空間でした。

高級住宅地の旧家に隠れた、不思議な汚部屋敷

ご依頼主はこちらに嫁がれたCさん。現在は徒歩30秒の離れにお住まいの義父さんと、おしゃれに改築された母屋で旦那さん、娘さんとの3人暮らしです。心労が重なり、とうとうお身体まで不調をきたしてしまったCさんが、途方に暮れた末に頼ってくださったのが『片付け虎の穴』でした。

「片付け虎の穴って何?」という方のために簡単にご説明すると、これはマニュアル通りの片付けを押し付けるのではなく、お宅ごと・ご本人ごとに合った片付け方法をピンポイントで探り、マンツーマンで伴走していく特殊プランです。今回のCさん宅は、まさにこのプランが必要になるべくして必要になった、という背景がありました。

屁理屈脳 vs. ド直感脳、水と油の同居

人には向き不向きがあります。物事をひとつずつ積み上げて考えるのが得意な「キチンとさん」タイプと、感覚でざっくり捉える「ざっくりさん」タイプ。どちらにも長所と短所があり、キチンとさんが拗らせると屁理屈屋に、ざっくりさんが拗らせると注意散漫になりがちです。そして最もこじれるのが、この正反対のタイプ同士が、一方が他方に片付け方を指導してしまうケースなんです。片付けの沼、まっしぐらですね。

今年亡くなられた義母さんは、根っからのキチンとさんでした。子供の頃からほうきを持たせておけば喜んで掃除をしていたという筋金入り。そんな義母さんが、母屋の状況を度々チェックしては、ざっくりさん代表のCさんに、ご自身の片付けルールを事細かに伝授していたのだそうです。冒頭のあの惚れ惚れするクローゼットは、まさにその「義母さんフィルター」がかかったエリア。他にも同じようなコーナーが、お宅のあちこちに点在していました。

片付け法に唯一の正解はありません。義母さんにとっては最高にしっくりくるやり方でも、Cさんにとっては苦痛以外の何物でもなかった。実際、ご本人は数々の片付けマニュアル本を読破し、セミナーにも参加し、資格まで取得されるほど知識は十分すぎるほどお持ちでした。それでも「お義母さんの片付け方には正直憧れました。私もあんな風になれればって……。でも私には無理だとわかってたんです」と振り返っておられました。

義父はジャイアン、夫は「しゃーない」しか言わない

Cさんを取り巻くストレスは、亡き義母さんの片付けルールだけではありませんでした。もうひとりの登場人物、離れに住む義父さんの存在も見逃せません。

その昔、商売繁盛で大勢のお手伝いさんが常駐するほどの賑わいを見せていたご実家でしたが、経営はやがて傾き、会社は倒産。人は一度手にした生活レベルをなかなか手放せないもので、ワンマン体質で見栄っ張りな義父さんは、昔からご近所でちょっとした有名人(もちろん、いい意味だけではありません)。「家長には絶対服従」という家風のもと、離れはスッキリさせたい義父さんの意向で、「絶対に捨てるな」というセリフとともに、大量のモノが次々と母屋へ押し付けられていったのです。

隣の離れは、ミニマリストもびっくりのスッキリ空間。それもそのはず、必要最低限の生活必需品を除くすべてのモノが、母屋行きになるルールだったのですから。しかも、送られてきたモノは「壊れて完全に使えなくなるまで絶対捨ててはいけない」という、なんとも身勝手なルール付き。モノへの執着は人一倍なのに、自分の身の回りだけはスッキリさせたい。そのしわ寄せは、まるごと身内に向かう。これでは、たまったものではありません。

さすがのCさんも旦那さんに「何とかして」と訴えたそうですが、返ってくるのは決まって「しゃーない、置いてやって……」のひと言。旦那さんは子供の頃、義父さんに厳しく躾られたトラウマから、ほぼ言いなり状態なのだそうです。義母さんからのプレッシャー、義父さんからの物量攻撃、そして味方になってくれない夫。この四面楚歌の中、Cさんはたったひとりで孤軍奮闘を続けてこられたのでした。

「私ひとりでは無理」から始まった、ハイペースな片付け虎の穴

片付け虎の穴のご利用者さまは、通常2週間に1度、あるいは月に1度のペースで片付けを、3か月~半年に1度のペースで不用品回収を進めていかれる方が多いのですが、Cさんはワンルームの汚部屋とはスケールが異なる”汚部屋敷”にお住まいです。不用品の量も、改善すべき部屋数も桁違い。片付けを始める前に心が折れてしまう方も少なくない規模なのですが、Cさんは平均的なご利用者さまと比べても圧倒的なハイペースで、少なくとも週1回、多い時は週2回という驚異のスケジュールで取り組んでおられます。「今年中に片付けの目途をつけたい、汚部屋生活から抜け出したい」という強い思いが、その原動力になっているようです。

文房具ラベリング地獄と、憧れというトラウマ

実際にご一緒に作業を進めていくと、お部屋のあちこちに、これまで何度も片付けにチャレンジしてこられた形跡が見つかります。それも、なぜか一部分だけが異様に整理整頓されているのです。日常的に片付けが得意な人が見ても、思わず息を飲むほどの細分化っぷり。散らかっているエリアとの落差があまりに激しく、「ここだけ別人が片付けましたよね?ねっ?!」と聞きたくなるほどでした。

その代表例が、文房具コーナー。消しゴム、鉛筆、マーカー、ペン、クリップ、鉛筆削り、修正液、付箋、ホッチキス、はさみ、定規……それぞれが個別に小分けされ、小さな引き出し一つひとつに、細かくラベルまで貼られています。悲しいのは、これだけ丁寧に小分けしても、モノの数自体が多すぎるせいで、同じようなケースがまた増えてしまっているということ。ここまで独力で整理するのに、一体どれだけの時間がかかったのでしょうか。

この徹底ぶりは、亡き義母さんの掃除にかける情熱に当てられた結果でした。同じ片付け法を強いられることに強い苦痛を感じながらも、Cさんはいつしか「私もあんな風に上手にモノを片付けられるようになりたい」という強烈な憧れを抱くようになっていたのです。本来の自分には合わない方法を、歯を食いしばって貫いた成果。その労力と苦しみへの愛着(執着)が強すぎて、このコーナーにはまだ手をつけられずにいます。ご本人も自覚されているとおり、ここはある種のトラウマやコンプレックスが形になって居座っているコーナー。無理に触らず、片付け虎の穴の最終段階でじっくり向き合おうということで一旦の決着とし、それ以外の場所から効率よく、Cさんに合った方法で片付けを進めています。

大物との決別、そして謎のCDとの遭遇

初回の片付け虎の穴は、玄関を抜け、廊下から部屋に入るまで足元にモノが立ちふさがる、まさに汚部屋状態からのスタートでした。モノが多すぎて、どう手をつけたらいいのか、Cさんご自身どうしたいのかさえぼんやりしてしまうほど。それでも回を重ねるごとに、廊下が片付き、キッチンが使いやすくなり、リビングに余白が生まれ……と、部屋の景色が変わるにつれて、Cさんの中でも「こうしたい」というアイデアが少しずつ明確になっていきました。

もちろん、すべての提案がすんなり受け入れられるわけではありません。Cさんご自身の迷いや執着で、先送りになる案件も出てきます。どのお宅にも、片付けを邪魔しているトラウマやコンプレックスの象徴のような存在があるものですが、Cさん宅ではそれが、破れたソファと古くなったマッサージチェアでした。年末ギリギリ滑り込みで、ようやくこの2つの大物と決別することができ、一気に部屋の抜け感が生まれました。

そんなシリアスな作業の合間にも、思わずクスッとなる瞬間はあるものです。作業中に出てきた、ラベルもジャケットもない謎のCD。「これ、何ですか?」と再生してみたところ、Cさんの反応はまさかの秒殺ジャッジ。中身を確認したその場で、迷いなく「これは要らないです(笑)」と即廃棄が決定しました。長年家に眠っていたミステリーの正体を突き止めた瞬間に、間髪入れずに「さようなら」を告げる。片付けの現場には、こういう小さな笑いも転がっています。

晴れやかな我が家へ、まだまだ続く道のり

アフターの様子をすべてお見せすることはできませんが、回を重ねるごとに、エリア単位で視界がクリアになり、使いやすく、そして元に戻しやすい状態に整ってきています。初回の片付けから今日までを振り返り、Cさんにもしっかりとご満足いただけました。それでも細部にはまだまだこだわりたいご希望がおありのようで、もしかすると忘れた頃に改めてご相談いただくことになるかもしれません。

義母さんの片付け哲学、義父さんの不用品ルール、味方になりきれない旦那さん……。Cさんのように、複数の「片付けにくい理由」が幾重にも重なってしまっているお宅は、決して珍しくありません。誰かと比べて「自分は片付けが下手だから」と思い込んでしまう必要はないんです。むしろ大切なのは、その人に合った片付け方を見つけること。晴れやかな気持ちで暮らせる我が家を目指して、私たちも一緒に、まだまだ片付けを進めていきます。

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